やろうやろうと思って後回しになっていたポールの冒険のレビューをするぜ!
発売前から注目していた作品だが、期待を裏切らなかったというか。
ある意味期待以上だったというか。
アドベンチャー・キッズ ~ポールの冒険~ポールの冒険はdsiウェア用に配信された2Dの横シューティング。
アイシーエムジャパンという謎のメーカーから配信されている。
全7ステージで、複数の武器を状況に応じてLRボタンで切り替え、
溜めショットも有効に使いながら進む。
使うボタンは方向キー、ショットボタン、武器切り替えボタン。
シューティングとしては非常にオーソドックスだ。
……オーソドックスなのになんでこんなにおかしいのか。
>豊富な海洋資源を狙って、ウミ星人が地球を侵略しようとしています。
>そこでカンフー修業中の赤ん坊、ポールが立ち上がりました。
>さあ、地球の運命は?「さあ」じゃねぇよ!
このファミコン時代のゲームみたいな投げ槍なストーリーがまずおかしい。
ウミ星人って!「オトト星人」と同レベルだよネーミングが!
そして何故武器が
「エネルギー波、手裏剣、如意棒、ハンマー、忍者、巻物」の6種類なのか!
お前カンフー使いじゃねぇの?!
手裏剣と巻物と忍者が別勘定なのがまたよく分からない。
ちなみに忍者は自分の分身を相手に発射して攻撃する武器。
忍者……いや、NINJAか。
グラフィックのショボさがまた凄い。
主人公のポールは常に直立不動のまま空を飛行。
方向キーで上下左右に動かしても直立不動でまったく体勢が変わらない。
手抜きかと思うが、揺れる前髪や手の動きは
ちゃんと2コマでアニメしているというよく分からない力の入れ方。
2コマ、そうこのゲームは大体2コマ。
ボスの動きやダメージモーションもコマ数が少なく全体的にカクカク。
何がおかしいのか分からないと思うが、
実際にゲームで遊ぶと言葉に出来ない不安感がプレイヤーを襲ってくる。
グラフィックのインパクトも凄いがBGMもまた凄い。
曲がおかしいとか、作成に使ったソフトがおかしいとかじゃなくて、
作曲した人自身がどうかしてる感じのBGM。
底抜けに明るいどころか、抜けた底から水が浸水してきてる感じの能天気なBGM。
たまに音程を外したりしてるんだが、そんなのが気にならないネジの外れっぷり
1面ボスの曲とか最初聞いた時は気が狂うかと思った。
しかし後半ステージのしっとりとした曲調は悪くないし、
全体的に異様なまでに耳に残る味のあるメロディー。
演出も全体的におかしい。ボスが登場前には
注意!!!と画面にデカデカと表示されて警告をしてくれる。
この時の「ぷわぁいーん ぷわぁーいん」という気の抜けた効果音がまた脱力モノ
クリアすると今度は音楽がブツッと途切れて
クリアの文字が画面中央に表示され、虹色で発光を始める。
間違っていませんよ!あってますよ!しかし何かがおかしい!
かと思うとステージ開始前には凄い味気ない文字で
「ステージ2 海上」とか表示されるのがなんか不安になる。
そこもうちょっとポップにした方がいいんじゃないですか。
360のLIVEアーケードで1周するたびに画面に
周と表示されるマッドトラックスというD3パブリッシャー製レースゲームがあるんだが、
それに通ずるものがあるシュールさだ。
そもそも、この素人が作ったホームページみたいなノリの
タイトル画面からしてちょっとズレてると思う。
敵やステージ構成もなんだかおかしい。
敵が巨大にしただけの魚介類ばかりなのはまあいいとして……。
それまで海上ステージとかだったのに途中でいきなり宇宙ステージへ行ったのは驚き。
カニの敵が群れで現れて画面内を「歩き回る」姿に大分混乱させられた。
宇宙ステージってことは次は敵のUFOとか母星で戦うのかな?
と思ったら次は南極ステージ。その次は最終ステージの深海ステージ。
なんで宇宙行ったの?!
ラスボスがデカいだけのタツノオトシゴというのもなかなか……。
そんなゲームなのにスタッフロールに完全新規の一枚絵が3枚あるという。
力の入れるとこおかしいって絶対!
で、シューティングとしては結構普通なのがなんだかいい。
ボスが異常に硬く、ダメージが通ってるんだか
通ってないんだか分からなかったりもするので、
まあオススメは出来ないレベルなんだが、
ザコ敵にきっちり個性付けがされていて、弾幕や単独の攻撃で無く、
「編隊」での攻撃を軸に攻めて来るのが古き良きシューティングっぽい。
武器も一長一短があるから使い分けて敵編隊を撃ち抜くのはなかなか楽しい。
色んな意味で「次はどうなるんだこのゲーム……」
って空気があるから先が気になるといえば気になる。
「赤ちゃんと魚の宇宙人が戦うコミカルなシューティング」
これだけのゲームなはずなのに全体的に凄い違和感の塊。
ファミコンじゃ出来ない処理も沢山やっているはずなのに、
この手触りはなんというか凄くファミコンのゲームっぽい。
いや、ファミコン時代のクソゲーっぽい!
>どこか懐かしさを感じる、
>誰でもお手軽に遊べるカジュアル・シューティングゲームです。こういう説明文なので「ファミコンっぽさ」は狙っているんだろ思うが、
このあふれ出る「ファミコンのクソゲーっぽさ」の方は絶対に天然でやっていると思う。
スタッフロール見たらアメリカ人と日本人とアジア人の名前が全部あったぞ。
それがこのセンスか。
グラフィックも操作感ももそのまんまのロックマン9よりも、
ポールの冒険の方が「ファミコンのゲームを遊んでいる感」が強いのが実に不思議。
手を抜いているわけじゃない、ネジが外れているだけだ。
そんな言葉が聞こえてきそうなゲーム内容。
このゲームがファミコンの誕生日である7月15日の前日である、
7月14日に配信されたのはもはや運命だと言う他無い。
大人気で今もネタにされ、語り継がれるようなクソゲーではない。
あの時代に当たり前のようにあって、誰もが遊んだことがあったはずなのに、
いつしか誰からも忘れられてしまった。それでも確かに存在していた。
そんなクソゲーが2010年に甦った。
タイトルはそう、「アドベンチャー・キッズ ~ポールの冒険~」。
「クソゲー」という言葉をどう使うかは人によって違う。
バカゲーと同じ意味で使う人も多いし、
愛せるのがクソゲーで、愛せないのは駄目ゲーだ、なんて意見も見る。
俺にとって「クソゲー」という言葉はどうしようも無くつまらないゲームのみを指す。
本当に、これは許せない!というゲームのみクソゲーと呼ぶ。
愛せるクソゲーなど存在しない。愛せるのならそれはクソゲーではない。
クソゲーにはただ哀があるのみ。
そういう線引きをしている俺が、
こういうことを言うのは大分誤解を招くことになると思う。
実際ゲームとしてはそこまでダメな作品ではない。
それでもあえて言いたい。
このポールの冒険は「クソゲー」だと。
言うなれば、誰かを笑顔にすることの出来るクソゲー。
「愛すべきクソゲー」だと。
長々と書いたが、
色眼鏡を外して見ると正直500円のゲームとしては微妙。
確かに見るべき点はあるんだが、ボス戦が単調過ぎ。
dsiウェアのシューティングは
「宇宙をかける少女シューティング」とかも含めて全部遊んだが、
その中ではやっぱりゲームとしては一番劣るデキだと思うので、
普通に面白いゲームを求めている人にはオススメ出来ない
色眼鏡をかけることの出来る人。
色眼鏡をかければ面白いのならジャンジャンかけるよ!いくつでも!という人。
レトロゲーが好きな人。
子供の頃からゲームを遊び続けてる人。
そういう人にはオススメかな。
プレイ開始してすぐに笑顔で「やっちまったー!」と叫びたくなること請け合い。
このアイエムシージャパンという怪しげなメーカーの次回作に大いに期待します。