内容は1997年にPS1で発売されたアジト1のリメイク……ではあるんだが
追加要素が非常に少ないのでほとんど3D化移植に近いな。
「操作性を改善させたアジト1」以外の何者でもない。
パンプレストから出ていたアジト2や3では
仮面ライダーなどの版権ヒーローが登場したが、
これはアジト1がベースなのですべて架空のキャラクター
なんとなくパチモノ臭いキャラ揃いで、
これはこれで胡散臭い雰囲気があって個人的には気に入っている。
子供の頃からの夢だった秘密基地を作るために脱サラをした主人公
20年間貯めたお金と人脈を駆使して集めた優秀な人員たち。
ここから夢の秘密基地建設が始まる!
しかし……既にこの地には多数の秘密基地が存在していた!
襲い来る3つの敵対勢力と戦いながら夢の秘密基地を完成させよう!
そんな胸がキュンキュンする設定で始まるゲームで初期資金は10億円である。
脱サラ主人公すげぇ?!
システムは
まず基地の動力室を設置し、司令室を設置し、
エレベーターや階段や通路を設置して部屋同士を繋げて基地の形を作っていく。
基地拡大には資金が必要なので、
研究室で怪しげな食べ物や怪しげなおもちゃや怪しげな薬などの商品を開発。
工場で生産して、基地の地上にカモフラージュとして立てたデパートなどで売りさばく。
たまにやってくる敵対勢力に対抗するために
怪人やヒーロー、巨大怪獣や巨大ロボットの開発。
怪人達を待機させる警備室や通路に仕掛ける罠。
基地の地上に設置する砲台なども忘れずに。
襲撃してきた敵対勢力をすべて殲滅できればそのステージはクリア。
部屋には研究員や工場長などを配置する必要があるが、
彼らにはイカリーゲージというのがあって、
これが100に近づくと反乱を起こすので定期的に休憩室で休ませないといけない。
反乱の内容は
「資金の9割を持ち逃げする」とか、
ハッキリ言ってシャレにならないレベルというか
プレイヤーを殺すつもりなのでタイミングによっては詰む。
イカリーの溜まっているキャラがいると警告が出るから気を配ろう。
まあ金が余ってくると「解雇→再雇用」で
手っ取り早くイカリーをリセットする方法もあるのだけど
どちらかというと経営ゲームっぽいシステムで、
アリの巣のような画面を見ながら予算をやりくりして
人員や怪人を配備・運営していくという非常に地味な内容となっている。
ザ・タワーが一番近いかな。
敵との戦闘もフルオートで、豆粒みたいなキャラ同士がぶつかり合い
「ビシ!バシ!」という効果音や叫び声などで展開される。
断末魔の叫び声である
「秘密基地ばんざ~~い!」と
「先に地獄で待っているぞぉぉぉーーー!」は忘れたくても忘れられない名ボイス。
ユニットを配置してオートで戦闘、と書くとタワーディフェンスっぽいが、
基本的に物量戦なのでそこまで戦略性は高くない。
開発した怪人は諜報活動をさせることも出来、
派遣すると一定時間経過後にイベントが発生。
いきなり埋蔵金を発掘して10億円ゲットしたり、
怪獣の卵を発見して新しい怪獣を作れるようになるなどの有用なイベントもあるが
横断歩道が渡れなくて困っているおばあさんの手をひいてあげようとしたけど
怪人だからおばあさんが超びびって念仏を唱えだすとか、
幼稚園バスがバスジャックされたので怪人を派遣したら
犯人と一緒になって暴れたりとか、
ゲーム進行にあんまり関係ないけどひどいイベントが多くて面白い。
このブログで紹介する時に「悪の秘密組織を運営できるゲーム!」と散々書いたが
実際は怪人やヒーローなど、作る戦力によって正義か悪かに変化する。
まあ、戦力は怪人が中心になるので普通に進めてると悪っぽくはなる。
ここら辺はアジト2で色々と変更されているんだけどこれは1移植なのでね……。
PS1版はマウス前提の操作になっている上にとにかくインターフェースが極悪で、
ちょっとしたステータスを確認するだけでも面倒だったんだが、
操作はスライドパッドで画面全体をスクロール、
方向キーでカーソルというスタイルで快適。
タッチペンだとメニューの切り替えがちょっともたつくのが残念だが、
ボタンでやる分にはいい感じだ。
ボタンを押さなくても施設にカーソルをあわせるだけで耐久度と人員のイカリゲージ。
開発中のブツがあるならそれの完成までの残り時間がパッと表示されるし、
アイテムの開発や生産に人員の選択など、
あらゆる場面での表示、操作が分かりやすくなっている。
初代は人員を休ませる時なんかかなり面倒だったんだけど今回はラクラク。
リアルに1分とかかかっていたセーブ時間も10秒ほどに短縮。
チマチマと怪人や商品を開発し、
チマチマと生産して販売して基地を維持していく地味なゲームだが、
独特のノリが楽しくてついついプレイし続けてしまう
登場するユニットや研究員や商品も実に個性豊かで、
全キャラ、全商品に説明文が用意されているのが素晴らしい。
またどっかで見たようなキャラがてんこ盛り。



特に研究員のこの3人とかひどすぎる……。
色々とゆずらないにもほどがある。
なんで元の絵柄よりちょっと古臭くなってるんだよ?!
あと海ちゃんだけあんま可愛くないし!海じゃなくて瑠魅ですけど!
特定の研究員を組み合わせると開発できる特殊商品というものがあって、
元のPS版だとこの3人で
「レイブレード」という
アニメビデオが作れたんだけど……。
さすがにマズかったのか全然関係のないアイテムになっているぞ。
ヒーローアニメ「チーター&ポニー」!……これはこれでダメじゃねーか!新しくしてどうする!
このゲームの自主規制の基準が全然わかんねぇぜ
でもそこが嫌いになれない。でも十分じゃない。

ゲーム中に通信などで登場するオペレーターはオプションで複数選択可能だが
選べる中ではこのウズマキング1号が好き。
「前職務:社会に疲れた人」が泣ける。

戦闘ユニットは序盤こそ
スルメイカ男とかウオ男とか弱そうな(実際弱い)怪人ばかりだが、
ゲームが進むにつれて強そうな怪人やヒーローも作れるようになる。

最高レベルになると名前からして超強そうな怪人がズラリ。
死神教授マジいい人……。魂抜き取るけど。
商品も変なアイテム揃いで説明文を読むためだけにどんどん開発したくなる。
ちなみに時期によって商品が売れやすくなるイベントが発生。
例えば年末セールだとゲームが爆発的に売れる。
通常時は人気がない商品でもとにかくゲームってだけで在庫が掃ける。

そして開発できるゲームはこんなふざけたゲームばかりである。
2の16乗のフラグを全部立てないとクリア出来ないゲームを
年末商戦の勢いで売りさばいて金にする!
これは非常に悪の組織的であり、
このような行為を行う組織の連中は皆殺しにしなければならないと思う。

こっちはバカ売れするだろうけど社会への悪影響が凄そう。
実に悪の組織的である。グリッドマンの出番が必要だ。
商品の中には普通にドラえもんのひみつ道具レベルだろ?!
って思うようなスゴいのも沢山あったりしてこれがまた面白い。

頭につけてイメージするだけで
コマ割りからペン入れに印刷や製本までしてくれる夢の機械!
これは敵対勢力が3つじゃ済まないくらい増えそうな商品ですね。
地味に中毒性のあるシミュレーション部分と愉快なバカノリ。
面白いことは確かなんだけど問題はゲームテンポの悪さと単調さ。
ここまでの説明を読むとやることが非常に多いゲームに思えるが、
実際はある程度コツを掴んでからは同じことの繰り返しになる。
アジト2以降と違って敵がやってくることを待つしか出来ない。
いつやってくるかはまったく分からない。
ゲームスピードを遅い・普通・最速の三段階で選べるが、最速にしてもかなり遅い。
しかもゲームスピードはあくまでも時計の針を早く進めるだけで、
基地内を移動するキャラの動きなんかはまったく早くならない。
オリジナルのアジト1そのまんまだ。
ゲームが進むと怪人や商品の開発時間がどんどん長くなっていくので、
ひたすら待っているだけの時間が大半となる。
全8ステージだけど多分最初のステージで四苦八苦している頃と、
うまく進むようになってきて
2番目のステージをクリアするくらいまでが一番面白いね
そこからは代わり映えのしない展開が延々と続き、
4ステージ目の中盤くらいからゲームクリアまでは完全に作業だわ。
終盤は敵でやってくるダレンジャーと
バックレ5が必殺技を連発してきて理不尽レベルの強さ。
最高レベルの怪人を4体ぶつけても一瞬で蒸発する。
普通の怪人やヒーロー相手ならまず負けないはずの巨大怪獣や巨大ロボでも危ない。
ダレンジャーとバックレ5はこっちでも作れるんだけど味方だと弱い……。
まともに戦っても勝ち目が無いので、
地上のカモフラージュに怪人を配置して自爆に巻き込ませるなどのテクがいる。
操作性や表示は確かに格段に良くはなっているものの、
せっかく下画面に全体マップが表示されてるのに
タッチした場所にカーソルを瞬間移動させるような機能が無いとか
細かい点では気になるトコがあるし、何より処理の重さが酷い。
基地を建設していくとメニュー画面やらなんやらがどんどん重くなり、
処理落ちで時間経過すらも遅くなっていくので前述のテンポの悪さに拍車をかける。
画面に基地内などを表示してると重くなるが、
カーソルを画面最上部に持って行き、青空を表示しておくと少し軽くなる。
こういう小ワザを使っていかないと
プレイヤーのイカリーゲージが溜まってしょうがないのだ。
青空でも見て心を休めよう。
……っていうかここまで書いた欠点は全部PS版も一緒なんですけど!
そんなところまで完全移植。どういうプログラムだ。
3DS版ならではの要素は画面の3D化。一部商品の追加。
操作性の改善。ゲームコインを資金や新商品の設計図にする機能の追加など。
でもPS1の時点でかなり地味だったグラフィックは
ほとんど代わり映えしないし立体感も全然無いし……。
オプションで切り替え可能な通常画面でのBGMは5種類から2種類に減少!
「プロジェクト・アジト」と「限りなき戦い」だけになってる。
「逃走戦隊バックレ5」「遥かなる勝利への道」「スターライト・セレナーデ」はカット!
「遥かなる勝利への道」がウルトラ警備隊の歌そのまんまだったり、
「スターライト・セレナーデ」が
ムーンライト伝説そのまんまだったのがマズかったのか?!
でもレイアース3人組はそのままだったりよくわかんね!
カットはしょうがないにしてもだったら新曲欲しかったよ。
アジトを今の時代に復活させてくれただけでも嬉しいと言いたいが、
さすがにこの内容はちょっとなあ。
移植モノとしても今出すのにバランスの悪さや
テンポの悪さまでそのままなのはどうかと思う。
何も超荒削りだった1をそのまんま持ってくるんじゃなくて、
システムやバランスだけを2準拠にするとか色々やりようはあったし、
処理の重さなんかは「ニンテンドー3DSなんだぞ!」と怒鳴りたくなるレベル。
ただ……やはりアジトはアジトなので嫌いになれない。

個性的なキャラ達と共に開発する怪しげな商品や怪人
版権モノじゃないからこそ醸し出される胡散臭い雰囲気。
地下の格納庫に巨大怪獣や巨大ロボットをズラリと並べた時のワクワク。
自分の手で自由に作れる秘密基地。
頭からしっぽまで、
ロマンではなく浪漫と呼びたくなる何かがこのゲームには沢山詰まっている
よく
「これは漢のゲームだ!」なんて言葉を見かけるが、
それならこのアジトは
「男の子のゲーム」だろうね。
今の時代だからこそ必要なゲームなのかもしれない。
ホントに激烈に人を選ぶゲームなのでオススメはし辛いが、
特撮やB級ノリが好きな人。
チマチマと進めるゲームが好きな人なら楽しめるかな。
チュートリアルが無いので公式の解説とかをしっかり読んでおいた方がいいぜ
3DSであの「アジト」を復活させてしまったんだ。
ハムスターには2の移植でも完全新作でもいいから「次」を出す責任がある!
先に地獄で待っているぞ!