THE昆虫採集の開発があまりにも有名なベストメディアのSIMPLE処女作。
SIMPEL1500THEスナイパーのレビュー行くぜ!
2001年の3月22日発売!なんとサクラ大戦3と同じ日。
怪作の多いSIMPLE1500シリーズの中でも1,2を争うカルト作で、
「SIMPLE1500なのに主人公のCVが池田秀一?!」という点で話題になり、
発売されてから内容のスゴさでまた話題になった作品だ。
内容はともかくユーザーのハートを見事に狙い撃ちした結果10万本越えの大ヒットに!
現在はゲームアーカイブスでも300円で配信中。
SIMPLE1500シリーズ Vol.56 THE スナイパー
ソフトウェアカタログ | プレイステーション® オフィシャルサイトTHEスナイパーはマフィアに恋人を殺された一人の男
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)となり、
謎の女C・Aと共にマフィアに復讐をしていくハードボイルドスナイパーゲーム!
最初に書いた通り主人公の声優は池田秀一!
もはや説明不要!機動戦士ガンダムのシャア役であまりにも有名だ!
ゲームはデモと狙撃パートの繰り返しで進行し、
全8話のシナリオには毎回OPとEDムービー、そして次回予告まで挿入されたりと、
一話完結のTVドラマを強く意識した構成となっている。
予断だがこのTVドラマ的構成は同じくベストメディア開発の
THEウォーシミュレーションやTHEファンタジー恋愛アドベンチャーに引き継がれている。
ムービーだけでなく、オプションの背景や読み込み画面などもなかなかの凝りっぷり。
意外にレベルの高い音楽も含めて
ゲームの雰囲気はフィルムノワール調で完全に統一されている。
狙撃パートはジョギングや車での移動、愛人との歓談をしているマフィア達を狙撃。
狙撃時間と狙撃ポイントを選択してからスタート。
方向キーで移動or照準の移動、L1L2ボタンで通常時の視点移動。
□ボタンでスコープを覗き、ターゲットを探して見つけたら×ボタンでズーム。
R2ボタンで弾丸発射だ。
スコープを覗いてターゲットを探して撃つだけとシンプルなもので、
ターゲットを一人撃ったらクリア。
1ミッションは1分から2分と短く、難易度もかなり低い。
終盤になると捻ったミッションも登場するが、
基本的には銃のクセさえ掴めれば詰まる箇所はほとんど無い。
そう……銃のクセさえ掴めれば……!
そもそもこれは銃のクセと呼べばいいのかどうか分からないが……。
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の使っているライフルは
一体どういうライフルだよ?!と叫びたくなるくらい弾速が遅いんだ!
発射された弾丸がトロトロとターゲットに飛んでいくのが視認できるくらい遅いので
移動しているターゲットを撃つ時は動きを先読みするなど少々コツが必要だ。
ホントに、一体どういうライフルなんだこれ……。
続編のSIMPLE2000THEスナイパー2では、
評価システムの導入や難易度の上昇などで狙撃パートの欠点は大分改善されているが、
弾速の遅さだけは何故かそのままだったので何かのこだわりなのだろうか?
グラフィックはなかなか凄い。
狙撃パートの街のグラフィックは縮尺がどこかおかしい上にポリゴンもガビガビ。
車も通行人も不自然なまでに少ないため、まるでゴーストタウン。
空の色もなんだか怪しく、夕焼け空は世界の終わりみたいな色合い。
おかげで街を見ているだけでどんどん不安になってくる。
これは孤独に復讐を続けるハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の
心理状態がそのまま画面に投影されている……と、前向きに後ろ向きな解釈をしたいと思う。
この怪しげな空の色は後にベストメディアが開発する
THEサバイバルゲームやTHE昆虫採集にも引き継がれている。
引き継がなくていいよそんな要素!使ってるグラフィックエンジンの関係かねぇ。
街には開発したベストメディアの看板も存在。
THEスナイパーを作ってくれてありがとう!(ズキューン!)
デモでの登場人物のグラフィックも、
PS1でSIMPLE1500であることを考慮してもちょっと……。
魂を吹き込まれたダミー人形が
魂を抜き取られて歩き回ってるようにしか見えない。
ただ、カメラワークや演出など、各所に稚拙ながら工夫が感じられるし、
その間合いを一瞬で詰めるのおかしいだろ?!と言いたくなる、
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)のマトリックスキックなど見所もあるから結構楽しい
あれは凄いぞ、うん。
肝心のハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の
口パクとセリフが丸っきり合ってなかったりもするが。
これは海外ドラマの吹き替えを再現しているんだと思おう。
え?じゃあハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)以外の登場人物には
そもそも口パク自体が無いのはどういうことかって?
そんなことを俺を聞かれても困る!
ストーリーはこれまた凄い。
こういう復讐をテーマにしたゲームだと
「復讐は復讐しか生まない!」みたいな展開になりがちだが、
特にそういうことも無く、
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の独白が延々と続きながらシナリオが進んで普通にEND。
そもそも敵対するマフィア連中のセリフが一言たりとも存在しないというのがまた潔し。
ラストのトンデモ展開含めて、いい意味で……いい意味で?
う~ん……………まあ、いい意味で!何も考えてない展開が炸裂だ。
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の長い独白と
宝石のように散りばめられた名(迷?)セリフの数々を堪能するつもりでプレイすればかなり楽しい。
池田秀一の演技の素晴らしさと、
「ああ!池田秀一を起用した段階で声優の予算尽きたんだな!」
と、一瞬で察知出来るそれ以外の声優の演技との格差がまた凄い。熱湯から南極へ。
ラストの脱力っぷりもすげぇぞ!
隠しモードも遊び心が感じられていい。
2週目に入るとセーブデータに「再放送」の文字が追加され、
さらに3周目に入ると……。
君は見たか!「THE ALIENS」のタイトルロゴを!
3周目でニューゲームを選択すると
「地球は侵略を受けている」からはじまるテロップが表示され、
まさかの「異星人編」がスタート。
ターゲットは一見すると普通の人間だが、特殊スコープで覗くと正体判明!
なんとタコの宇宙人!正体見たり!外道照身霊波光線!
あくまでもおまけモードなので
ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)の語りなどが一切無いのが残念。
これでボイスやちゃんとしたシナリオがあったら最高だったのになあ。
1時間かからずにクリア出来るボリュームの無さ、
グラフィックのショボさ、ゲーム部分の内容の薄さ、
ストーリーの凄さなど、ゲームとしては明らかにデキが悪いと言えるんだが、
稚拙ながら凝ろうとしている演出やカメラワーク、B級洋画的な雰囲気、
脱力モノのラスト、随所に感じられる遊び心、そして池田秀一の語りで大体許せてしまう
演出とかBGMはホントに結構カッコ良かったり。
クソゲーと言われることも多いし俺も否定はしないが、
少なくともTHE戦艦やTHE男たちの機銃砲座やTHEゾンビクライシスのように、
作り手のやる気の無さだけが伝わってくるような作品とは違う。
本当に稚拙ではあるがこだわりややりたいことが伝わってくるし、ネタ分も豊富。
こういう作品は憎めないんだよね。
あらゆる意味でチープで、
本来ならばただの駄作で終わってしまいそうな内容なのに、
「CV池田秀一」を基盤にして完全に独自の世界観を構築してしまった一作。
聞いたことも無い様な洋画をレンタルしてきたつもりで深夜に遊ぶと変に面白い。
SIMPLE1500シリーズの中でも異色な本作。
発売から12年経った今、改めて遊んでみるのも一興だ。
オススメはしないがオススメ!
現在はゲームアーカイブスで300円と手に取りやすくなったので、
PS3で、VITAで、PSPで。あるいはこの3つすべてで
良ゲーでもクソゲーでもない「THEスナイパー」の世界に触れてもらいたい。
ちなみに今は亡きゲーム雑誌「コンティニュー」でSIMPLEシリーズ特集を行った際には、
なんとこのTHEスナイパーを製作したベストメディアの直井清剛氏へのインタビューも敢行!
池田秀一を起用した理由については「素直にシャアを使いたいなあ、と(笑)」と超ストレート。
ベストメディアは元々録音スタジオをやっていたので声優方面のツテがあり、
裏技を使って2つか3つの関門を突破したとか、
声優は池田秀一か小林清志のどちらかで考えていたとか、
THEスナイパー2はファンからの熱い要望で実現したとか、短いページながらも貴重な話題が満載。
3はありえるのかという質問に関しては
「ええ、最初から3作目まで考えていました。
あとは時代を『1』の前にさかのぼって、ハリーが町を出る前のエピソードとかもアリですね」と、やる気マンマン!最初から3部作の予定だったとは!
SIMPLE1500THEスナイパーが発売されて12年。
コンティニューでのインタビューは2003年なのでそこから既に10年。
THEスナイパー3は未だその姿を見せることはなく、
D3と組んでTHE昆虫採集やTHEサバルバルゲーム2など多くのSIMPLEを開発したベストメディア自体も
現在はソフトの自社開発&自社販売を行っておりD3との仕事はまったくしていない。
だが俺は信じたい。
SIMPLEシリーズが不滅なように、THEスナイパーもまた不滅なのだと。
いつかまた、俺達の前に元気な姿を見せてくれるはずだと。
最後に、ハリー・C・スペンサー(CV池田秀一)のお馴染みのセリフでお別れしよう。
君は闇の向こうに何が見えるか!※この記事は超絶対SIMPLE主義という1ヶ月の予定が4日で頓挫した企画で書いたレビューですが
そのままだと惜しいので2009年8月に執筆したものを
2013年1月11日に加筆修正して再投稿したものです。