死んでも復活出来る薬「NanoMed」の大流行により2042年のTokyoでは人が死ななくなった。
街は発売元である製薬会社の広告で埋め尽くされ、大勢の人間が「NanoMed」を買い求める。
そんなTokyoで主人公がのんきにテレビを見ていたら、
いきなり自分が殺人容疑で指名手配されて、警察が今にも突入する様子が放送されてビックリ。
警察の銃撃を避けながら仲間の車(2042年なので空を飛ぶ)に乗り込み逃亡!
無実を証明するための戦いが始まる……!
というストーリーだ。
この導入部分のスピード感が見事で引き込まれるぜ。
主人公は殺人が濡れ衣であることを証明する情報を集めるために殺し屋になり、
バンバン仕事をして名を上げることになる。
殺人をしていないことを証明するために殺し屋になって仕事をするゲーム!
なんか「5年以内に成果を上げないと留年よ!」って言われたどこぞの錬金術師みたいだな。
フィールドを歩き回ってメインミッションを進めても良し、
大量にあるサブクエストや収集物集めに挑んでも良しな構成。
メインミッションが難しかったら稼いで強い武器を買ってから挑んだりもできる。
2042年のTokyoは巨大な顔、謎のゆるキャラ、怪しい日本語のネオン看板などで溢れていて、
「ブレードランナー」の影響を色濃く感じさせる。
「ニンジャスレイヤー」って言った方がピンと来る人も多いかな。
引いたカメラワークで描かれたミニチュアのような街を、
豆粒のような群衆と火器を持った主人公が歩き回る。
反対運動を起こすパンカーや武装ヌーディスト、マフィア達があちこちで目を光らせており、
時に血と銃弾が撒き散らされ、殺された人間は薬の力で再び蘇る。
死が軽く、あまりに空想めいた近未来のTokyoの雰囲気は絶品。
アンビエントなBGMがまたマッチしてるんだ。
フィールドはなかなか広くて歩き回って風景を眺めているだけでも楽しいし、
あちこちにアイテムも落ちているからしっかり拾っておきたい。
主人公はどんなに高い所から落下してもノーダメージなので(穴に落ちた場合は即死)、
ジャンプでビルからビルへと飛び回りながら隠された収集物を探すのだ。
武器も日本刀やピストル、ショットガン、ミニガン、ロケットランチャーなど色々あるぜ。
遊んだ人間全員の記憶に残る裏の権力者「ニューババア」などキャラも濃い。
やはり元ネタは「AKIRA」に出てきたミヤコ様なんだろうか。
というわけでビジュアルや世界感は良いんだが、
肝心の戦闘パートはグラフィックとシステムが噛み合っておらずイマイチ。
ミッションは大量のザコに囲まれたターゲットの抹殺や、目的地への到着が多いんだが、
1人のザコ敵に気づかれた瞬間に、
周りの10人以上のザコ敵すべてがこちらに向かって全力で猛攻撃をしてくる作り。
マシンガンの銃撃に、画面外からの手榴弾や狙撃が雨のように押し寄せてくる。
狙いが正確なので、迂闊にジャンプで避けると空中で敵弾が当たって死亡。
主人公は一撃死なのにこれはつらい。
ほとんどの銃は撃った瞬間に音で気付かれるので、
狙撃で一人倒しても気づいた他の敵に狙撃されてカウンターで殺されたり、
こちらに気づいてない敵に手りゅう弾を投げると着弾前に気づいて回避行動をとったりもするのでやっかい。
かといって、敵が賢いかと言われるとまったくそうではなく、
仲間の死体を見てもノーリアクションだし、チラッと見られた程度なら視線を切れば問題ない。
なんだか大雑把。
〇ボタンを押すとエネルギーを消費して変装できるので、
敵に見つかったらこれでうまく逃げて隠れることで警戒を解除できるのだが、
使うタイミングが結構難しい上に、エネルギーを補給出来る場所が限られているので使いづらい。
結局、武器は色々あっても音のしない日本刀で近づいて後ろから殺すステルスプレイを強制させられる。
しかし見ての通りキャラがとにかく小さくて、視線や当たり判定、どこから見ているかが非常に分かり辛い。
しゃがんで隠れたつもりが見つかっていた…なんてことが多い。
2Dのゲームに見えて遮蔽物や地形は立体的なのでとにかく敵に弾を当てづらく、
右スティックを押し込むことで地形を考慮した精密射撃に切り替えられるが、
しっかり狙おうにも敵はお構いなしに物量押しで数十発の弾を正確に叩きこんでくる。
カメラは動かせるが左右のみ、45度刻みなので細かいところで敵や敵弾を見失うことがしばしば。
ズーム機能は無し。
ボス戦はこれに輪をかけて理不尽で、
正面から敵の大部隊と戦わないといけないとか、
バッタみたいにジャンプして地形無視しながら何十発もの弾と手りゅう弾を同時に乱射してくるとか、
狭い部屋で砲台やロボと戦わせるとか、ホントに敵と敵弾を増やしただけの雑調整でつらい。
ラスボス戦は俺の血管が切れるのが先か、ラスボスが死ぬのが先かという勝負だった。
難易度変更は不可能だ。
ラスボスを除いてチェックポイントが多いので直前から復活出来る場面が多いのが救いだったが、
ゲームとしてデキが良いとは言い難いぜ。
ストーリーも淡々と仕事をこなしているうちに物事が進行するようなノリで物足りなかった。
序盤は興奮したマフィアを武装ヌーディストにぶつけて抗争を引き起こすとか楽しいノリだったんだが、
ゲームとしての理不尽さと単調さにぶち当たるまで早かったわ。
キャラと弾の小ささはそこそこデカいテレビ使っている俺でもしんどかったので、
小さいテレビを使っている人だと相当厳しいと思う。
グラフィックとBGM、世界観は文句無しだが、ゲームとしては色々残念。
期待して買っただけに大分悲しかったぜ。
殺し屋アクションではなく、2042年のTokyoを歩き回る観光ゲームだと割り切った方が良いね。