ストーリーは主人公の女子大生「財部 美穂」が合コンに誘われるところからスタートする。
そこで出会ったイケメン「仙田 秋成」とイイ感じに盛り上がり、
退屈な日常が華やかになっていく美穂だったが、
とある民話「送り犬」に纏わる恐ろしい出来事に巻き込まれていく。
文章を読み進めて途中の選択肢でオーソドックスなノベルゲームで、
表題になっている「送り犬」以外にも様々なルートが用意されているぞ。
どちらかというと人間の怖さを描いたノリが色濃いが、
王道ホラー、陰惨な展開からギャグ、SF、感動までジャンルは様々。
エンディングはバッドエンド含めて全35種類となっている。
選択肢によって展開が変わるゲームは珍しくないが、
これはその場の選択肢でキャラ設定の根幹までガラッと変わってくるので展開が読めない。
選択肢一発で、いきなり主人公がサイコ野郎だったことが判明して唐突にエンディングになったり。
やり直して違う選択肢を選ぶと、普通の女子大生としてそのままストーリー進行したりね。
とにかく選択肢で分岐する展開がバラエティ豊かで、
ホラー展開からの大団円で綺麗に終わることもあれば、ビックリするくらい唐突なエンディングで終わったり、
よくこれを家庭用ゲーム機でやったな……!と思うマジでドン引きする展開が用意されてたりもする。
そもそも主人公が女子大生で、割と普通に抱かれる展開もあるので年齢層高めね。
主人公が狂人になって誰かを殺すようなエンディングもあれば、
主人公が狂人に殺されるエンディングもあるので、先手を取って狂った方が勝ちみたいなとこある。
トレーディングカードゲームみたいだ。
ギャグ展開も色々あって、序盤の選択肢を適当に選んだら、
怪奇現象が一切起こらずに主人公がパチプロで一発当ててENDに辿り着いて爆笑したわ。
他のルートでは殺したり殺されたりする主人公が、平和にパチンコで稼いで家まで買う。
地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ない俺たちの上がりじゃねぇのか?
ルートによっては別の登場人物の視点で進むこともあって、
そちらはそちらでジャンルがまったく違うストーリーが展開される。
警備員である「山本幸男」の視点で進むシナリオは、
職業設定を生かしたまさに怪談ってノリで面白かったし、
その流れで唐突に変な選択肢をブッ混んでくるのもすごく飯島多紀哉っぽい。
新規シナリオだと思われる2本もそれぞれ異なる主人公によるストーリーで、
不思議なペットを飼う話とガチホラーの2編。
選択肢がない一本道だけど、どちらも面白かった。
短編集的な作りで、メインシナリオである『送り犬』も含めて割とあっさり終わる。
ちょっとイマイチなルートや、
意味不明のまま終わったり、数合わせっぽく終わるエンディングもあったりはするんだが、
選択肢一つで予想外の方向に転がっていくストーリーは遊んでて飽きさせなかったぜ。
割とどのルートでも気の毒な目に合ってるキャラに同情したり、
可愛いけど行動や思考が読めない主人公に恐怖を感じたりできるのはこの形式ならでは。
違和感や認識の違いから来るホラー展開での不気味さの演出や、
割とあっさり終わるからこそ残る余韻の上手さはベテランらしさを感じられた。
単語や人名が同一のお遊び程度だが、
『学校であった怖い話』シリーズをやってるとニヤリと出来る場面もチラホラあって嬉しかったね。
気になった点としてはテキストを送るときの効果音。
ドラクエで壁にぶつかった時みたいな音で慣れるまではかなりの異物感。
クイックセーブをした時の、珍しい楽器を階段から落としたような大げさな音も気になる……。
音量調整は出来るが、効果音を下げるとゲームそのものの効果音も下がっちゃうから困るぜ。
そこ以外のシステム面は、沢山作れるセーブデータに高速スキップにバックログ、
選択済みの選択肢にチェックマークが付くなど不満点は無いんだけどね。
あと、各ルートのクライマックスなどでよく流れる「逆転!」的なBGMが、
やたら明るい曲調で浮きまくっているのでイントロだけでちょっと笑っちゃう。
よりによってパチプロENDで出てくるパチンコ店で普通にBGMとして出てくることもあり、
「パチプロ勝利のテーマ来た!」と余計に面白くなってしまったわ。
やはりこのゲーム、最終的にパチンコがすべてを救うのか……。
全エンド見るまで10時間掛からないくらいか。
色々といびつな作りではあるが、そこがまた魅力でもある。
良い意味で昔ながらのサウンドノベルっぽさに溢れた1本だ。
これで990円はかなり気合を感じる作りだぜ。ピンと来た人にはオススメだ!