かなり前に買った宮部みゆきの「ここはボツコニアン」を読了。
ゲームネタの小説だったのでせっかくだから感想を書いておこう。
ボツネタが集まって出来た「ボツコニアン」という出来損ないの世界を
本物の世界に創り変えるために、選ばれた少年ピノと少女ピピの2人が
案内役である「世界のトリセツ」と共に冒険の旅に出るファンタジー。
カバーを外すとファミコンカセット風の装丁。
本格ファンタジーでもなければメタ的な世界観を生かした斬新な話というわけでもなく、
地の文章で作者が突っ込みを入れまくったり、
唐突に作者の好きなゲームや映画の話が始まったりするムチャクチャな内容。
FF7で初めてフィールド画面に出た時に作者が感動した話とかがいきなり挟まったりする。
メタネタに楽屋オチ満載で、
不自然な展開やご都合主義も「ボツネタで出来た世界だから」の一点でほとんど済まされる。
中にはそれボツネタじゃなくてただのクソゲー要素では……って点もあったり。
選ばれた2人の姉弟がご都合主義と作者の好き放題に振り回されながらなんとか冒険していくお話だ。
出てくるキャラもどこかユルい連中ばかりで壮大さや悲惨さとは無縁。
帯には「誰も見たことのないNEW宮部ファンタジー」とか書いてあるが、
このユルいノリはどちらかというと20年くらい前のラノベみたいなノリに近い気がするなあ。
「これ小説じゃなくて宮部みゆきのゲームエッセイだろ!」という意見も見たがまあ確かに。
ゲームネタは有名作品中心でマニアックになり過ぎてはいないんだけど、
その割に映画ネタは濃かったりするので本当に好きなネタを並べただけなんじゃないかと思う。
ゲーム好きじゃない宮部みゆきファンが読んだら頭抱えそうな内容だが、俺は非常に楽しく読めたぜ。
ちょっとしたあるあるゲームネタもくすっと出来るし、
色々な意味でいい加減な展開に軽く呆れながらも突き進むピノとピピの2人もいいキャラ。
ピピの魔法は絵にしたらアレだろうけど文章だと可愛らしい感じで結構好きです。
王都を舞台にした3章が一番面白かったな。
チュートリアルも終わって冒険が本格的にはじまってキャラが成長していく。
RPGもここが面白いところなのだ。
作者のメタツッコミが無いだけで
「これはアレが元ネタだな!」と分かる舞台や挿絵へのぶん投げも笑った。
徹底したユルいノリとクドいくらいの作者語り・作者ツッコミは好き嫌い分かれるとこだけど、
魔法陣グルグルが好きな人なんかは結構合うんじゃないかと思う。
続き物で去年の11月に2巻も出たのでそのうち読みたい。
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見た目はライトだけど、中身はある意味重度のミヤベファンでないと楽しめないという本w