嘘つき姫と盲目王子 | 日本一ソフトウェア『嘘つき姫と盲目王子』のレビュー行くぜッ!
メーカー:日本一ソフトウェア
機種:PS4/Switch/Vitaパッケージソフト
ジャンル:アクションアドベンチャー
発売日:2018年5月31日
価格:税抜6980円(PS4/Switch) 税抜5980円(Vita)
日本一ソフトウェアが送る完全新作アクションアドベンチャー!
怪物と人間の姿を使い分けて、目が見えない王子様を誘導しつつ進む内容。
手書き風のグラフィックと、優しい朗読で綴られるストーリーが最大の特徴だ。
アクションアドベンチャーとしてボリューム、完成度共に難点はあるものの、
雰囲気と音楽はあまりにも期待裏切らない作りで、クリアした後の満足感は文句無し。
俺はあまり使わない表現だが「尊い」という言葉しか出てこなくなったぞ……!

ストーリーはある森から始まる。
美しい歌声を持つ人食いの化け物と、化け物と知らずにその歌声を毎晩のように聴きにくる小国の王子様。
最初はただ丘の上で月に向かって歌うだけの怪物だったが、
段々と、歌を終えた後に響く王子様の小さな拍手を楽しみに歌うようになっていく。
お互いのことを知らなくても、その歌声と拍手だけで通じ合うものがあった。
が、ある日、もっと仲良くなりたいと思った王子様が丘に近づいてしまう。
自分の正体を知られてしまうと焦った化け物が手を振った拍子に、
その鋭い爪で王子様の顔を引き裂き、目を潰してしまう。

森に住む魔女に頼み、自分の歌声と引き換えにお姫様の姿を手に入れた化け物は、
顔を引き裂かれたことで城に幽閉されてしまった王子様を助け出す。
王子様の目を治してもらうために再び魔女の元を目指すことになるが、
化け物は自分が目を傷つけた張本人であることがバレないか不安でいっぱい。
こうして「嘘つき姫と盲目王子」の小さな旅が始まるのだ……って、
もうこの導入だけで胸がいっぱいなんですけど!
魔女に「お姫様にして欲しい」ってお願いするところの化け物がまた可愛らしい。
絵本のようなデモ画面は登場キャラのセリフも含め、
すべて声優の近藤玲奈による優しげな朗読で綴られていて、
これがまた雰囲気にベストマッチしていて浸れる。

ゲームとしてはステージクリアタイプのパズルアクションで、
2人でゴールまでたどり着けばクリアだ。
プレイヤーが操作するのは姫で、いつでも化け物に変身可能。
化け物になれば大ジャンプできるし、立ちふさがるザコ敵も爪で粉砕出来るし、攻撃にも無敵。
しかし毛むくじゃらの化け物の腕では王子の手を引いて歩けないので、
手を引いたり、王子に指示を出したりする時は、か弱い姫の姿にならないといけないのだ。
王子が攻撃されたり、姫の時に攻撃されたりするとゲームオーバー。
王子だけやられた時の姫の悲しそうな顔がつらい!
□ボタンで手を繋ぐことが出来るんだけど……。


この時に2人ともちょっとだけ微笑む描写が素晴らし過ぎて反則としか言いようが無い。
鼻からレッドカードだよこんなものは!
「プレイヤーがボタンを押すことで手を繋ぐ」のが良いのだ……。
ステージに隠されている花を見つけて王子様にプレゼントする要素もあるんだが、
その時の2人の嬉しそうな表情も見所オブ見所。
さすが日本一ソフトウェアだけあってこういうアニメが上手いなあ。
こういった細かな描写があるからこそキャラクターに厚みが出る。
2人のやり取りが暖か過ぎて、遊んでいて思わず笑顔になってしまうぜ。

嘘つき姫、「見た目は怖いけど優しい怪物」とかではなく、
ガチで恐ろしい人食いの怪物だったところが俺は凄く気に入ってる。
道中では王子様に食べ物として生肉を差し出しちゃうとか、
「人間と怪物」のすれ違いもしっかり描かれていて、
その度に「嘘」を重ね続ける嘘つき姫に胸が締め付けられる。
また道中で出会う他の怪物が、良いタイミングでこっちを曇らせてくる……!
恐ろしい仕掛けや怪物が散りばめられた美しい森の中を、
盲目の人間と嘘つきの怪物が手を取って1歩1歩進んでいく。
音楽も絵本のようなグラフィックも何もかもが見事な儚さだ。

ただ、パズルアクションゲームとして見ると大分粗削り。
姫と怪物の体重差を利用したギミックや、
王子に指示を出して自動で歩かせるアクションを利用して時間差で進む場面。
暗号を元にした謎解きなど色々と盛り込んではあるものの、
ゲームとしてそこまで新鮮なものではないし、カメラの動きなどで仕掛けが分かりにくかったり、
暗所を進むなど、単純に面倒なところも進んでいくにつれて増えていく。
高所から落下すると死ぬんだけど、足場が分かりにくくて何度、2人揃って投身自殺したか……。
怪物の姿と姫の姿を使い分け、
目が見えない王子に嘘をついて先へ進むパズルアクションという発想は秀逸なものの、
全体的にシナリオパートとゲームパートがやや噛み合ってないように感じられて、
はやくストーリーの続きが見たいのにパズルアクションやらなきゃいけない!
ってなってきちゃうのが勿体ない。
10分以上経過したステージはクリアせずスキップ出来るという微妙な救済措置はある。
収集物を全部集めても6時間掛からないくらいで終わってしまうのでボリュームも薄い。
ストーリー自体は過不足なく語られていて、
似たようなステージが延々と続くとか、アイテム全部集めないと真エンド見れないとか、
そういう水増しじみた面倒な構成じゃないのは良かったし、
収集物を集めると見られる設定資料はデザイナーのコメントもあって見応えあったけどね。

安価で個性的なインディーゲームが溢れている昨今。
フルプライスなことを考えると、
パズルアクションパートの完成度も含めてどうしても割高に感じてしまう本作だが、
雰囲気とシナリオだけ見れば唯一無二かつ100点満点で100点のゲームで、
それを志方あきこによるテーマソング「月夜の音楽会」が120点にしてくれるダメ押し。
各方面に配慮して120点にしたが個人的にはトータルで3億点くらい上げたいですね!
公式サイトを見てこちらが期待するものを、しっかりと期待してた形で出してくれる見事なおとぎ話。
設定やグラフィックなどで「これはッ!」となった人は、値段とか無視してとにかく買って貰いたい。
この尊さ、買って後悔させないぞ!
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売上は伸び悩んでるみたいだけどジワ売れして欲して利益を出して欲しいな