賢明なる諸君へ!
怪獣が出る金曜日のレビューが完成したので更新をします!
怪獣が出る金曜日|GUILD02 公式怪獣が出る金曜日はレベルファイブが3月13日に800円で配信した3DSDLソフト。
有名クリエイターにこれまでにない実験作を作ってもらうというギルドシリーズの1本だ。
本作を担当したのは「ぼくのなつやすみ」シリーズを製作した綾部和&ミレニアムキッチン。
核心的なネタバレは伏せるが
今回はかなりストーリーやプレイ時間に突っ込んでレビューするのでいつも以上に注意ね。
毎週金曜日に巨大怪獣が出現するという、
ヒーロー番組のような町に住んでいる少年そうたが主人公。
最近引っ越して来たばかりのそうたを操作して、友人を作ったり怪獣のヒミツを探ったりしていく物語。
ゲームとしては単純な作りで、
町をあちこち歩き回って誰かと会話してフラグが立つと話が進んでいく。
複数のエピソードが同時進行したりもするが、
基本的にマップ画面に表示されたヒントマークのところに行けば話しが進むので詰まることはナシだ。
ぼくのなつやすみの人が作ってるだけあって町の雰囲気作りは実に見事。
いかにもな商店街にうらぶれた路地に町に残ってる怪獣の足跡に
TV番組の宣伝がバーンと貼ってある放送局にと
舞台となっている昭和40年代風の世田谷は歩いているだけでなんだかワクワクしてくるし、
駅から漏れ聞こえてくる発車アナウンスとか
商店街を歩いてくると聞こえてくる宣伝とかの音周りの作りも丁寧。
キャラの動きもかなり細かいんだよねこのゲーム。
ゲーム中に怪獣カードバトルで負けた相手は勝った相手に呪文を唱えられると
その場でバタリと倒れなければならない……という呪文ごっこ遊びが出てくるんだけど、
この倒れ方も全キャラ違っていて、そのままバターンと倒れるキャラもいれば
いかにも女の子らしく倒れるキャラもいるし、妙に演技派っぽく倒れるヤツもいる。
主人公のそうたがお父さんと話す時にさりげなく同じポーズを取るとか、
こういうちょっとした仕草も含めてしっかりと個性付けされているからとても魅力的に映る。
会話テキストも楽しいからおつかいイベントも苦にならない。
俺のお気に入りキャラは……フランク、S子、メガミちゃんかな。お父さんも好き。
随所に入るナレーションはいかにも子供向け番組っぽいお姉さん声で、
これが妙にテンション高くて量も多いのでやや人を選びそうだが俺は好きだね。
メインテーマの歌もまたいいんだこれが。
「特撮パロディ作品」ではなくノスタルジー的なノリが強いので
特撮オタクがニヤリとするような要素は意外と少なかったりするんだけど、
怪獣カードはやっぱりいかにもどっかで見たような怪獣が多いし、流星マークの防衛軍もある。
合体怪獣のカードがジャンボキングそのままなのは吹いたぜ。なんと通好みなチョイス。
パロとして使用されること自体珍しいような怪獣ですよジャンボキングって!
正確には怪獣じゃなくて超獣なんですけども!ジャンボキング割と好きなんでこれはニヤリとした。
難点はシナリオが詰め込みすぎな点。
毎週金曜日に怪獣が出る設定だから
長い期間の話を描いたゲームで色んな怪獣が出るのかと思ったら
実際はいきなり金曜日当日からスタートしてその1日だけの物語。
個々のエピソードには良い話も多いしキャラ自体は魅力的なんだけど、
なんでもかんでもこの1日でやろうとしちゃってるから掘り下げ不足に感じた。
転校してきたばかりの主人公に新しい友達が出来て、町を案内してもらって、
カード勝負して、呪文ごっこも覚えて、商店街の人たちとの交流もあって、
同じ日に転校してきたクラスで6番目の飛び切りの美人とも仲良くなって、
街にやってきたナゾの人物とのやり取りがあって、ついに怪獣が出現して……。
って話を全部1日でやろうとしてる!そりゃ駆け足にもなるわ。
この構成は「毎週金曜日に怪獣が出る」ってコンセプトを台無しにもしちゃってるね。
金曜日に怪獣が出るなら直後の土曜日にもドラマがあるし、
怪獣が出る直前の木曜日にもドラマがある。
怪獣が出るのにまだ少し日にちのある月曜日辺りにだってドラマがあるはず。
「月火水木金土日」のすべての曜日に違ったワクワクが生まれるはずで、
このすべての曜日を大事にしてこそ「
毎週金曜日に怪獣が出る」って設定が生きるんじゃないか!
それを一切描かず、いきなり金曜日当日から始まって
その日だけで完結するんじゃ片手落ちもいいとこだぜ。
絶対に1ヶ月くらいの期間を取ってやるべきだった。
全部の日にしっかりしたイベントや会話デモを用意しなくてもいいから、
「それから2日後…」みたいなモノローグだけで進むシーンが多くなってもいいから、
とにかく曜日の変化を、時間の流れを感じさせる構成にして欲しかったよ。
ここだけは絶対どうしても譲れない点だ。
もしかしたら
「実際の巨大ヒーロー特撮番組も週に1日だけの1話完結で進むことが多いから
このゲームも1日だけで全部終わる内容にした」という思想で作られているのかもしれないが、
そうだと仮定してもあまり上手く機能しているとは言いがたい。
せっかく町の作りがいい雰囲気なのに立体視がおざなりなのも残念。
「画面の一番手前にある看板だけ立体的」「画面の一番手前にある茂みだけが立体的」
みたいなのがほとんど。怪獣登場シーンのアングルや演出もいいだけになあ。
1時間半から2時間でクリア可能な点は、
まあ定価800円で雰囲気ゲーだからちょっとした映画1本分と考えれば許容できた。
グラフィックや演出がその分リッチだし歌もあったりするしね
クリア後には本編クリアだけじゃ埋まらなかったエピソードをクリアするやりこみ要素もあるんだが、
これは蛇足の極みにもほどがあってどうしようもない。ここはホント褒められない。
「ミニゲームの怪獣カードバトルでカードコンプする」「特定の組み合わせで会話フラグを立てる」
という2点なのだが、まずカードコンプするまでの道のりが苦行レベルのつまらなさ。
怪獣カードバトルは5枚のカードを使ってプレイするジャンケンをベースにした内容で、
まあ単純ながらそれなりに読み合いもあるんだが
「チョキ以外に勝つ」「パー以外に勝つ」「グー以外に勝つ」という以外カードの存在と
あいこだった場合はカードの攻撃力の高い方が勝つというルールのせいで
クリア後に戦う強力なカード使い達が相手だとかなり運が絡んでくる。
攻撃力が高いカードをバシバシ使ってくるからあいこだとほぼ負けだ。
また、単純に勝てばカードを貰える!というシステムではなく、
「1度勝ってる状態の相手にもう1度勝つと高確率でピースを貰える事がある」というもので、
そのピースを更に7枚集めて初めてそのカードが手に入る。
ピースはランダムなので狙ったカードを引き当てるには何十回も繰り返し遊ばなければならない……。
カードバトル自体は2分程度で1試合が終わるとはいえ、遊んでてきつい。
ナンバー13と14のカードはクリア後にクリーニング屋にいる相手からじゃないと出ない気がするし
ナンバー3のカードもヤキメシ相手じゃないと出ない気がするしと、
対戦相手によって出るピースが違うような気もするんだが、
ヒントみたいなのは無いからとにかく戦いまくるしかない。コンプまで本当に辛かった……。
クリア後はキャラと会話するたびに「主人公の興味のある話題」がコロコロと変化していき、
「○○の話題の時に○○と話すと話題が○○になるので、その状態で○○に話しかける」みたいな面倒な手順を踏まないとクリアにならないエピソードがいくつか登場する。
もちろん完全ノーヒント。
話す前にカードバトルで勝たないと会話がスタートしないこともあるので本当に面倒くさい。
このおまけ要素のエピソードは
物語の核心に関わるような内容でもなんでもないちょっとしたシナリオばかりだし、
単純にゲームとしての面白さもまったく無い。
ひたすらに面倒なだけでプレイ時間の水増しのための要素以外の何者でも無いね。
このせいで本編は2時間未満で終わるのにコンプまでには5~6時間掛かる。
せっかくの雰囲気ゲーに作業要素をぶち込んで台無しにしてどうする。
全エピソードクリアでギルド01連動特典の
「防衛宇宙局少年隊員手帳」が連動無しでも解禁されるんだが、
まさか連動の価値を上げるためにこんな苦痛な内容にしたんだろうかと勘繰ってしまう。
コンセプトは物凄く好きだし、
超蛇足なクリア後に目を瞑れば良かった部分も多いんだけどやはり色々と物足りない。
唯一無二の内容なのは間違いなく、
キャラとか雰囲気とかテキストはホントに凄くいいだけに勿体無い。
値段分の面白さはあるし低予算作品と言ってしまえばそれまでなんだが、
話にしろゲーム部分にしろ、もっと低予算ならではの魅せ方がいくらでも出来たと思う。
色々と惜しいゲームでした。次があるなら期待するぜ!
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